イオンプレーティングとは、宇宙開発技術の一環として、アメリカで開発されためっきの一つです。めっきとは大きく分けると「湿式めっき」と「乾式めっき」(真空メッキ)に分けられます。
一般的にめっきでイメージされるのが、湿式めっきです。湿式めっきとは、金属の溶けた溶液中などで成膜を施すものを指します。
一方、乾式めっきは真空中などで成膜するものを指します。当社で行っている「蒸着法」と「イオンプレーティング」はこちらの乾式めっき(真空メッキ)に分類されます。
物理気相成長法(PVD)の各種原理
固体材料を熱やプラズマのエネルギーを用いて気化させ、基板に堆積させることで薄膜を形成する方法です。
蒸着法
蒸着法は真空中で膜にしたい材料を蒸発(あるいは昇華)させ、その蒸気が基板(膜をつけたい対象物や箇所)に到達して堆積することで膜を形成する方法です
蒸発材料や基板に、電気的に印加させることもなく、気化した材料がそのまま基板に到達するため、基板のダメージが少なく純度の高い膜が形成できます。
イオンプレーティング法
イオンプレーティング法は、蒸着法とほぼ同じ原理です。異なるところは、蒸発粒子をプラズマ中を通過させることで、プラスの電荷を帯びさせ、基板にマイナスの電荷を印加して蒸発粒子を引き付けて堆積させ膜を作成するところです。これにより蒸着法に比べより密着性の強い膜を作ることが出来ます。
スパッタリング法
スパッタリング法は、プラズマ等により高いエネルギーをもった粒子を材料(ターゲット)に衝突させて、その衝撃で材料成分をたたき出します。その粒子を基板上に膜を堆積させることで膜を形成する方法です。
材料そのものをたたき出しているので、合金の成分がほとんどそのまま基板上に堆積することが出来ます。
化学気相成長法(CVD)の原理
膜としたい元素を含むガスを用いて、熱や光、プラズマなどのエネルギーにより励起、分解させ、基板表面で吸着、反応等を経て堆積させる方法です。
プラズマCVD法
膜としたい元素を含むガスを導入し、プラズマにより励起や分解をさせて、基板表面で吸着、反応等を経て膜を形成する方法です。
プラズマを用いるため熱CVDに比べて低温での製膜が可能です。
また、PVD法と比べても非常に付きまわりがよいのも特徴です。
蒸着法(VD)の特徴
- 膜純度が高くできる
- 基板ダメージが少ない
- 比較的弱い密着力を逆に利用可能
- 条件によっては膜がボーラスになり易い
- 影になった部位には膜が付きまわらない
- 密着力はアンカー効果と拡散に依存
イオンプレーティング法(IP)の特徴
- 密着力は真空蒸着より強い
- 低温でも密着が得られる(極一部の膜種除く)
- 成膜条件の多様性が得られる
- 反応膜が可能
- 影への膜の付きまわりは真空蒸着より良い
- 合金膜が可能
スパッタ法の特徴
- 再現性にたけている
- 合金膜が容易に成膜できる
- エネルギーが高いため反応膜も容易
- 密着力が強く結晶性の高い膜が得られる
- 成膜速度があげにくい
- 直進性が強いため影に付きまわりにくい
プラズマCVD(P-CVD)の特徴
- 影への膜のつきまわりが良い
- 自由度が高く多様性に富んだ手法
- 無機物質に加え有機物質の成膜も可能
- 反応膜が成膜できる
- プロセスの最適化を得るのが難しい
- 副生成物の種類によっては処理が必要